なぜ甘いものを食べすぎると虫歯になるのか?
「甘いものを食べすぎると虫歯になる」というのは、誰もが知っている常識です。
しかし、「なぜ砂糖が歯に悪いのか?」と聞かれたとき、多くの人が「歯に砂糖がついて虫歯菌が増えるから」というお口の中だけの理由を思い浮かべるのではないでしょうか。
実は、砂糖の過剰摂取はお口の中での直接的なダメージだけでなく、「血糖値の急変動(血糖スパイク)」や「体内の栄養バランスの崩れ」を通して、体の中から歯を弱くしてしまうことが分かっています。
今回は、砂糖が歯に与える悪影響について、お口の中と体の中の両面から詳しく解説します。
まず、お口の中で起こる直接的な影響です。砂糖(ショ糖)は、お口の中に潜むミュータンス菌などの虫歯菌にとって最大のエネルギー源(エサ)です。
- ネバネバしたプラーク(歯垢)を作る虫歯菌は砂糖を取り込むと、歯の表面に強く貼り付くネバネバした物質(グルカン)を作ります。これがプラークです。
- 強力な「酸」を発生させるプラークの中で菌が砂糖を分解・代謝する際に、強い酸が生み出されます。
- エナメル質が溶け出す(脱灰)発生した酸によってお口の中が酸性に傾くと、歯の最も硬い表面(エナメル質)からカルシウムやリンといったミネラルが溶け出します。これが進行した状態が「虫歯」です。
砂糖、特に精製された砂糖(清涼飲料水や甘いお菓子など)を摂ると、体の中で起こるのが「血糖スパイク(血糖値の急激な上昇と降下)」です。この血糖スパイクが、実は歯の内部の自浄作用・防御システムを狂わせてしまいます。
これを説明するのが「DFT理論(Dentinal-Fluid-Transport:象牙質内の流体輸送システム)」です。
歯は生きており、内側から外側へ栄養の流れがある
実は、歯は単なる硬いコップのようなものではなく、内部の神経(歯髄)から象牙質を通って表面のエナメル質に向かって、微細な液体(体液)が常に内側から外側へと自浄作用のように流れています。これが「DFT(象牙質内の液体輸送システム)」です。
この液体の流れが正常に保たれていると、歯の内部から水分やミネラルが供給され、外からの細菌や酸の侵入を防ぐ「自然の防衛機能」が働きます。
血糖スパイクが「液体の流れ」を逆流させる
ところが、砂糖を過剰摂取して血糖スパイクが起こると、自律神経やホルモンバランスの働きが一気に乱れます。
すると、本来【内側から外側】へと流れていた歯の液体の輸送システムがストップしたり、最悪の場合は【外側から内側(歯の内部へ)】へと逆流してしまいます。
流れが逆転すると、お口の中の酸や細菌毒素が歯の奥深くまで引き込まれやすくなり、内側からの防衛力が失われて虫歯が一気に進行しやすい状態に陥ってしまうのです。
大量の砂糖が体内に入ると、それを消化・代謝・分解するために、多量のビタミンB群やカルシウム、マグネシウムといった大切なミネラルが消費されます。
体内のカルシウムバランスが崩れると、唾液に含まれるミネラル分も減少してしまいます。通常、溶けかけた歯は唾液のミネラルによって修復(再石灰化)されますが、体内のミネラルが枯渇していると唾液による歯の修復力が著しく低下し、歯が脆くなってしまいます。
砂糖の「量」と同じくらい注意が必要なのは、「摂取する頻度と時間」です。
通常、食事をしてお口の中が酸性に傾いても、時間を置けば唾液の力でお口の中は中性に戻り、溶けたエナメル質も再石灰化されます。
しかし、清涼飲料水をちびちび飲み続けたり、飴やガムを絶えず口に含んでいたりすると、血糖値が乱高下し続けると同時に、お口の中も常に酸性のまま放置されます。
DFTによる内部からの防衛システムが停止し、お口の中も酸性で溶け続けるため、虫歯のリスクが跳ね上がってしまうのです。
砂糖の過剰摂取から歯を守るためには、単に「食後に歯を磨く」ことだけに頼るのではなく、体の内側の環境を整えるケアが欠かせません。
- ダラダラ食べ・飲みをやめる: 血糖スパイクを防ぎ、お口と体液の流れを正常に保つ時間を作る
- 甘い飲み物に注意する: 液体状の砂糖は一気に吸収され、最も激しい血糖スパイクを引き起こす
- ミネラル豊富な食事を意識する: 代謝で失われがちなビタミン・ミネラルを補う
「歯の健康」は、「全身の栄養や代謝の健康」と深くつながっています。日頃の食事や間食の摂り方を少し意識して、外側からも内側からも健康な歯を守っていきましょう。
